不動産投資の7大リスクと対処法を不動産のプロが解説

不動産投資に限らず、あらゆる投資には「リスク」が伴います。ここでいう「リスク」とは「危ない」という意味ではなく「リターンが不確実であること」「予測不可能なこと」です。そこで「不動産投資のリスク」について大きなものを7つにまとめてみました。

不動産投資はリスクを把握しないと失敗する

「リスク」を知ることは不動産投資を知ること

不動産投資は、文字通り「不動産」に「投資」しますから、不動産の特徴に対応した様々な「リスク」があります。一定期間不動産を所有し、賃貸収入を得ることが不動産投資の根幹ですので、保有期間内に考えられる「リスク」を把握し、対処をしておくことが不動産投資にとって非常に重要なことです。

  • 「大規模工場の閉鎖が決まって出ていく人が続出してしまった」
  • 「築20年を超えたらガス室外ユニットが壊れ始めて交換費用が増えてしまった」
  • 「ローン金利が上昇して収入よりも支出が増えて赤字になった」

リスクを認識して対処しなかった結果、大失敗した話を良く聞きます。

では実際、不動産投資にどのようなリスクがあるのか?

その対処法と共に不動産投資の7大リスクについてお話します。

不動産投資の7大リスク

空室リスク

不動産投資は、投資用不動産を賃貸して得られる賃料収入(インカムゲイン)が収入の大きな柱です。

ゆえに空室が発生したらどうなるでしょうか?

賃料収入は得られず、支出だけが出ていく事になります。

特にワンルームマンション投資は空室が発生するとローンの支払いを自己負担する必要があり、途端に赤字経営に転落します。ワンルーム投資は「丁半博打」だと指摘する評論家もいますが、一棟アパート・マンションと違って「一部屋」ですから、退去者が出ると完全に無収入です。あながち「丁半博打」も言い過ぎとは思いません。

空室リスクの対処法

「家賃保証=サブリース」が最もメジャーな対処法です。

「家賃保証」は新築ワンルーム投資で多く見られますが、売主業者や関連会社が家主から物件を借り上げ、月額賃料のうち80%~90%の金額を、空室発生時でも確実に支払うシステムです。貸主である家主から業者が借り上げますので、業者が「転貸人」として入居者を募集し賃料を得ます。ゆえに「サブ」の「リース」(賃貸)で「サブリース」と呼びます。

一見すると素晴らしいシステムに見える「家賃保証=サブリース」ですが、様々な問題がありますが、ここで説明をすると長くなるので省略します。

この他の対処法として、以下の方法があります。

  • 「物件周辺の賃貸需要を調べ、埋まると判断できる物件を購入する」
  • 「大学、工場などの移転、新設などの情報を収集する」
  • 「退去者が出て入居するまでの未収入期間を把握しておく」

滞納リスク

退去者が出なくても、賃借人が会社にリストラされるなどの理由で賃料が支払われない事態もあり得ます。これが「滞納リスク」です。

こればかりは入居時の審査で大手企業勤務者を条件に絞り込んでも避けられるわけではありません。労災認定されるような業務上の事故で、入居者が働けなくなる事もあり得ます。

また滞納が発生した場合、滞納者に支払いを催促する必要があります。別途「催促リスク」として分類する場合もありますが、いずれにせよ、賃貸人本人が遠方に住んでいる場合など、業者に交渉を依頼すると費用も発生してしまいます。

滞納リスクの対処法としては、また「家賃保証=サブリース」の活用が挙げられますが、デメリットもあります。ただし、家主自ら交渉すると、慣れない交渉でトラブルの「火」に油を注ぐ危険も生じますので、交渉に慣れた賃貸管理会社(家賃保証なら保証会社)に費用を支払って委託する方がベターです。

家賃下落リスク

不動産は「土地」と「建物」の複合体ですが、「土地」はなくならず、基本的には価値は減りません。一方で「建物」は新築時をピークとして、古くなるに従って劣化していくため、基本的に賃料水準も築年数が進むにつれて下落していきます。

また、経済動向も賃料水準に影響を与えます。

今日現在、2020年東京オリンピック開催を前に、都心三区の賃料水準は上昇傾向が継続しています。

しかし、誰もが「終わったら、ミニバブルが崩壊する」と予測していますので、その前に売却処分を考える投資家も多くいます。実際に景気減速を「今年」と読む説、「来年」と読む説など、多くの経済学者や評論家が予測しています。

再び経済情勢が悪化すると、企業の業績が悪化し、賃金も下落します。すると高い賃料は敬遠され、その結果賃料を下げないと入居者が入らない状況になります。

家賃下落リスクに対処する方法

こうした家賃下落リスクに対処する方法は、物件の購入時に

  • 「賃貸需要が常にある地域の物件を選ぶ」
  • 「ブランドのあるマンション内の物件を選ぶ(マンション一室の場合)」
  • 「駅から徒歩10分以内の物件を選ぶ」

などが挙げられますが、いずれも「経済動向が悪化して賃料が下がっても、需要が必ずある立地条件の物件を選ぶこと」に尽きます。

また、間取りや広さ、賃料が高過ぎない物件を選ぶ事も対処法の一つです。

火災・地震リスク

火災・地震を分けて説明する場合もありますが、私は2つをまとめました。

不動産の売買契約書を読み合わせる時、定番の文言があります。

「天災地変、その他売主・買主いずれの責に帰すべからざる事由によって物件が滅失若しくは毀損した場合」

地震や大洪水などの「天災地変」はいつ、どこで起こるか全く予測がつきません。
比較的地震リスクが高いと予測された仙台は、あの3.11が実際に起こってしまいましたし、逆に地震リスクが低いと思われていた熊本でも大規模地震が発生してしまったのです。

火災は入居者の不始末であろうと、隣家からの延焼だろうと、起こるかどうか全く予測がつきません。

こうした火災・地震リスクに対しては「保険」で対応することが大原則です。

それぞれ「火災保険」「地震保険」に加入する費用は発生しますが、加入しておかなければ、大地震で物件が「滅失」すれば賃貸借は継続不能となり、その時点で投資計画は破綻します。

この他、細かい対処法も上げられますが、ここでは代表的な保険の説明に留めます。

金利上昇リスク

経済動向により銀行の貸し出し金利が上昇するリスクがあります。

多くの場合、不動産投資のために購入する物件は「レバレッジ効果」を狙ってローンと現金で資金調達していると思います。10数年前は年収条件がありましたが、100%ローンが可能だった金融機関もあり、借入れ(デッド)100%の物件も実際にあるわけです。

貸出金利が変動すれば、変動金利のローンは金利分が上がる事によって毎月の返済額が増加します。それが不動産投資の「支出」を増加させることになり、収支計画が変化します。

ワンルームマンション一室を90%近くのローンで購入した場合など、場合によっては毎月のローン支払い額が増えたことにより、収入(インカム)を支出(アウトプット)が上回ってしまい、収支が赤字に転落することもあり得ます。

金利上昇リスクの対処法

金利上昇リスクに対しては、まず購入時に借り入れ部分をなるべく少なくすることが挙げられます。(借り入れレバレッジ効果については説明を省略します)また、資金があれば繰り上げ返済を行ってどんどんローン残高を下げていくことが対処法の代表例です。

なお、借入時に固定金利を選択することも一考ですが、通常、固定金利のローンは変動金利よりも高い金利で固定されるため、低金利時のメリットを受けられず、一長一短があると言えます。

修繕リスク

賃貸物件の建物部分は経年劣化によって痛んでいきます。

一棟のアパート・マンションをイメージしてください。

屋根は10年前後で亀裂が生じたり、屋上防水加工、屋根の破損・劣化で雨漏りする可能性があります。外壁も汚れて見栄えも悪くなりますし、鉄部の塗装もボロボロに剥がれたり、海に近い場所ですと、海水の塩分によって錆が進みます。

アンテナも湘南地区のオーナーに聞くと

「10年持たないね」

そう言われた事があります。

このように年々劣化する箇所を、不動産投資をする方は「貸主」として修繕しなければなりません。
これが「修繕リスク」です。

このリスクの対処法として、あらかじめ築浅の物件を選ぶということも一理ですが、修繕リスクを無くすことはできません。従って、あらかじめガス湯沸かし器室外ユニットなど、新築後10年を目安に増える修繕ポイントを把握しておき、毎月のインカムから修繕費用を手元に残し蓄えることが必要です。

事故物件化リスク

最後に「リスク」として事前に対処もできない不測の事態があります。

それが「事故物件化リスク」です。

ここでいう「事故」とは、入居者が病気により物件内で死亡した場合や、自殺、殺人事件などが物件で発生することです。

地域の住民に認識されてしまうことにより、入居者が著しく減少、あるいは退去者が続出し、もはや賃貸借が継続できなくなるケースもあり得ます。

新宿のマンションを売買したとき、管理人へヒアリングした時のこと

「事件?あるよ。築30年経ってるんだよ。殺人事件も起きたし、自然死もある。ここは新宿だからね」

「新宿だから」事故が多いと私は言えませんが、管理人からそう言われた事がありました。

TVでも男女関係のもつれが原因で事件がアパートやマンションで起きたニュースは見たことがあるでしょう。あなたの所有物件で起こらないとは言えません。入居者の審査を強化しても完全には避けられません。

事故物件化リスクの対処法

対処法は、入居者審査を厳しくすることですが、完全に逃れる方法はないと言えます。

この場合、起きてしまった事は仕方がないとして、

  • 特殊処理業者による現状回復後、再度賃貸借に出せる状況か否か?
  • 事故発生後入居者が退去希望を出すような状況になるかどうか?

が大事です。

状況を見極めた上で、運用を続行できるのなら、一室が完全に入らない事を想定した収支計画に変更して運用を継続するか、最悪の場合は投資を切り上げ、事故物件でも買い取ってくれる建売業者などへ売却し、キャピタルゲインを得て投資を終わらせるオプションも考えねばなりません。

不動産投資のリスクを踏まえた投資計画を

避けられないリスクも押さえておく

今回私は「リスク」を7つに纏めましたが、記事によっては10個以上細分化しているものもあります。その中でも空室、滞納、家賃下落、火災・地震、金利上昇・修繕までは言い方が違っても共通するはずです。

最後の「事故物件化リスク」まで押さえるかどうかは意見が分かれそうですが、「リスク」は「リターンの不確実性」です。

あなたの投資用不動産で何も起きないとは言えません。「リスク」は必ず押さえた投資計画が重要です。

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