不動産投資に節税効果はあるのか?項目別の節税効果まとめ

不動産投資には節税効果があることをご存知でしょうか?サラリーマンの税金である「所得税」「住民税」だけでなく、「相続税」「贈与税」なども節税することができます。では具体的な例を挙げながら実際にどのような節税効果があるのか、不動産投資を始めようとする方へお話します。

不動産投資を使った節税とは?

不動産投資の節税効果は「所得税」「住民税」だけではない

不動産投資のメリットの一つに「節税効果」があります。

本来は不動産投資を個人で行う場合の他、法人を作って物件を複数買って運用する方法など、複数の投資法があるのですが、ここでは不動産投資の初心者を対象に、個人の節税効果に絞ってお話しします。

  • 「ワンルームを買うと天引きされる給料の税金が下がると聞いたんだけど」
  • 「相続対策にアパートを建てると節税効果があると業者に持ち掛けられた」
  • 「子供や孫に現金を渡すのではなく、不動産投資を使うと節税できるらしい」

様々な節税について聞いたことがあると思います。
税務の専門分野は税理士であり、不動産鑑定士が不動産の専門家といえども税務について語ることはいけませんので、具体的な税額計算でなく「しくみ」についてのみ説明することにします。

今回は不動産投資による節税効果とはどのようなものがあるのか?
それぞれメリットとデメリットをご紹介します。

不動産投資に節税効果はあるのか?

所得税・住民税の減税効果(個人の場合)

不動産投資の節税効果で真っ先に挙げられるのが、サラリーマンの給料から天引きされる「所得税」「住民税」の節税だと思います。

本来、不動産投資は、賃貸借に供して長期的に得られる賃料収入「インカムゲイン」と、投資期間終了後、売却処分時に得られる利益「キャピタルゲイン」の二つが収益の柱であり、本来「利益」を得るために行う投資行動です。

しかし、不動産投資による節税効果もあります。

サラリーマンが給料を貰うとき、「天引き」されて手取り額は支給額の80%前後になっていると思いますが、その引かれた20%前後には社会保険や厚生年金などの他、税金である「所得税」「住民税」が含まれています。

サラリーマンが働いて会社から貰う給料は「給与所得」です。

これに対し、不動産投資によって得られる所得を「不動産所得」といいます。

不動産所得は「家賃収入」から「必要経費」を引いたものであり、購入時の費用も「必要経費」に含まれます。

「損益通算」について

ここで重要なポイントの一つとして、「損益通算」が挙げられます。簡単に言うと「不動産所得」で生じた赤字を「給与所得」から引くことです。

平成バブル期の「不動産投資」は「不動産投資」で赤字を作り、「給与所得」を減らして「所得税」「住民税」を節税するスキームと転売利益(キャピタルゲイン)目的がほとんどでした。

「減価償却」について

また、もう一つのポイントは「減価償却」です。「減価償却」は税務上、購入した資産を決められた耐用年数に分割して費用化することです。

不動産の構成物のうち「土地」は減ることはありませんので減価償却はありません。
従って不動産の場合、建物の構造毎に「耐用年数」が決まっており、その年の不動産所得から「費用」として差し引くことができるのです。

この「減価償却費」は、実際にお金を動かすことなく費用計上するため、建物の減価償却期間中その恩恵を受け続けられます。

ちなみに税務上、建物の耐用年数は以下の通りです。税法で決まっているため「法定耐用年数」と呼びます。

  • 木(W)造22年
  • 軽量鉄骨(LS)造19年
  • 鉄骨(S)造34年
  • 鉄筋コンクリート(RC)造47年

従って購入した投資物件の築年数が耐用年数以内であれば、帳簿上の費用である減価償却の恩恵受け、収入から差し引く費用が多くなるわけです。

「損益通算」と「減価償却」の2つが「所得税」「住民税」の節税における大きなポイントです。

不動産投資には相続税の節税効果もある

不動産投資は相続税対策にも効果があります。

地方都市や郊外へ行くと、木造や鉄骨造のアパートが畑の横に建っている光景を見ると思いますが、多くが相続対策の物件です。

そもそも不動産投資に限らず、相続時には現金よりも「不動産」の方が相続税の評価額が低くなります。

国税庁の相続税路線価は時価よりも低いですから、生前に現金でなく不動産を購入して相続対策する方が多いことも頷けるでしょう。(相続税路線価は時価=地価公示価格の80%が目安です)

従って不動産投資による相続税の節税効果は当然あります。

相続税の基礎控除額が変更されました

近年、相続税の基礎控除額が変更され、「3,000万円+(600万円×法定相続人数)」となりました。それまでは「5,000万円+(1,000万×法定相続人数)」だったため、今まで相続税を意識していなかった中流層も相続対策のため2,000万、3,000万の賃貸用不動産を購入する動きが活発になっています。

相続税の算定根拠は、土地は相続税路線価に、形状による補正率を乗じて求め、建物は固定資産税評価額×1とされています。(相続税路線価のない地域では「倍率方式」を使います)また、土地上の建物が居住用建物である場合や、賃貸物件の場合は貸家建付地として更に評価が下がります。詳しくは国税庁HPを参照して下さい。

最初に触れた通り、「不動産投資」でなくとも、現金を「不動産」にすることで、評価額が少なくなります。加えて賃貸収入も得られるため、主に農家や地主層が相続対策でアパート・マンションを建てるのです。

私が今記事を書いてるこのマンションも、世田谷区内にある元農家の地主が建てた相続対策の賃貸マションです。

不動産投資は贈与税の節税効果も見込める

贈与税は相続税とリンクする税金ですが、この贈与税にも不動産投資による節税効果があります。

贈与税の基礎控除額は現在110万円です。
従って、それ以下の金額を親から子供へ贈与しても非課税です。ですが1億の現金を贈与すれば額面通りの1億円に対し、基礎控除額を引いた全額に贈与税が課されることになります。

では、一億円で不動産を購入し、贈与すればどうでしょうか?

前項の相続税でお話した通り、不動産の贈与税の課税額は相続税と同様な方法で算出されるため、土地・建物共に時価を下回ります。ゆえに投資用不動産も「不動産」ですから、節税効果があります。

「生前贈与」という言葉を聞かれた方は多いでしょう。

相続が発生する前から少しずつ贈与して節税する対策、と簡単に言えばその通りですが、明らかな税金逃れが明白な場合や、不動産を購入後すぐ贈与するなど、税務署が認めないケースもありますので、ここでは「不動産投資によって贈与税の節税効果がある」ことだけを知っておいて下さい。

不動産投資による節税にはメリットとデメリットがある

これまで説明したように、不動産投資には所得税・住民税、相続税、贈与税などを節税する効果があります。

しかし、節税ができる反面、様々なデメリットがあります。

賃貸経営が黒字に転じれば増税

個人の「所得税」「住民税」ですが、投資用不動産の賃貸経営で赤字を出すことで「損益通算」により「給与所得」を減らすしくみですから、賃貸経営が黒字に転じれば逆に増税になることは当然です。

減価償却はいつまでも続かない

中古ワンルーム・一棟アパートなど、「減価償却」の耐用年数を超過した場合、帳簿上の費用である「減価償却費」がなくなり、収入から差し引く費用が減り、一気に黒字化してしまうのです。つまり減価償却はいつまでも続きません。

赤字では次の住宅ローンに不利

赤字経営している個人には、住宅ローンや次の物件を買うための投資用のアパートローンを貸し出す金融機関はありません。「節税」だけを考えていると、こうした当たり前のデメリットを見失います。

空室リスクによって不動産が負債化する

相続・贈与税についいても、別の回でお話した不動産投資の「リスク」によって大損害を受ける可能性があります。特に郊外や地方都市に多く建つアパートの多くは「空室リスク」を考えず「節税」重視で建てた結果、主変の賃貸需要がなく、空室ばかりで計画通りの収入が得られず老朽化するだけの「箱」と化した物件が相当数見られます。

共有名義は気を付ける

所有者を兄弟間で共有名義にした場合、全員が一致しない限り売却して換金することもできません。持分だけを買う「ワケ有り物件」専門の買取り業者もいますが、買い叩かれて二束三文にされるのがオチです。

不動産価格が下落することも

物価下落で資産価値が下落すれば不動産の価格も下落します。一定期間保有することが前提の不動産投資ではこうした「景気変動リスク」も考慮する必要があります。

金利が上昇したら負担増

ここ数年はずっと低金利ですが、「金利上昇リスク」によって1%でも金利が上昇すれば毎月のローン返済額も増加し、収支は悪化します。

このように不動産投資には確かに「節税効果」はあるものの、反面デメリットも多いため、単に「節税」を目的とした不動産投資は決してお勧めできません。

節税目的の不動産投資はデメリットに注意

不動産投資の目的は長期的賃料収入を得ること

確かに不動産投資には「節税効果」があることは確かです。しかし、不動産投資の基本はあくまで長期的かつ安定的な賃料収入「インカムゲイン」を得ることが主眼であり、赤字の賃貸経営のために物件を購入すれば、住宅ローンの審査に落ちマイホームが購入できないかもしれません。

また相続・贈与税対策の投資物件購入も課税価格を減らすどころか、大事な資産価格そのものを減らしてしまうとすれば、その不動産投資は失敗です。節税だけを目的とした不動産投資は危険ですので、本来の目的を忘れないようにして下さい。

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