不動産投資と税金および節税のポイント
不動産投資に限らず、収益にこだわる場合は、税制について一定の知識を得ていなければなりません。収入の種類により10の所得に分類し、それぞれ計算式が異なるためです。ここでは不動産投資をする上で必要な税の仕組みについて解説していきます。
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目次
不動産投資をする上で必要な不動産所得の知識
不動産から得られる賃料は、10ある所得区分のうち、不動産所得に該当します。まずは不動産所得の求め方を確認しておきましょう。
- 総収入金額 - 必要経費 = 不動産所得の金額
賃料収入にそのまま税金がかかるのではなく、必要経費を引くことができます。総収入金額に含めるもの、必要経費に含めるもの、それぞれ確認しておきましょう。
<総収入金額に含める収入>
- 家賃収入
- 更新料や頭金
- 返還しない敷金や保証金
- 光熱費・水道代等(共益費として受け取る場合) 等
<必要経費>
- 不動産収入を得るために使った費用(原則)
- 租税公課(固定資産税等)
- 損害保険料
- 減価償却費
- 修繕費
- 管理費
- 借入金の利子
- 仲介手数料 等
給料や賞与は給与所得に該当しますが、給与所得のみの場合、確定申告をする必要がなく、年末調整で課税関係の処理が終わります。ですので、最初は収入に含めていいのか、必要経費になるのか、悩むことが多々あるでしょう。ただ何を収入に計上し、何を費用として認めてもらえるかを把握しておかなければなりません。
不動産投資の規模が一定基準に達すると・・・
不動産投資の規模について解説する前に、青色申告制度について触れておきます。
青色申告は税制上の様々な特典を受けることができますが、貸借対照表や損益計算書の作成のために正規の簿記(複式簿記)で記帳し、申告期限内に確定申告をしなければなりません。また7年間の帳簿保存義務があります。
要件を満たして受けられる特典を次の通りです。なお、青色申告でない場合は白色申告となります。
<青色申告と白色申告の主な違い>
特典 |
青色申告 |
白色申告 |
給与の必要経費算入 (青色事業専従者給与) |
給与を全額必要経費に算入 |
最高86万円まで必要経費に算入 |
青色申告特別控除 |
最高65万円控除 (10万円控除もある) |
控除なし |
純損失の繰越控除 |
3年間 |
災害損失等に限り3年間 |
純損失の繰戻還付 |
還付あり |
還付なし |
※上記の他にも、引当金の繰入れ、準備金の積立て、減価償却の特例、棚卸資産の低価法選択などあります。
さて不動産投資の規模についてですが、貸家5棟以上や貸し部屋10室以上を貸し付けると、「事業的規模」の不動産所得と認められます。青色申告者で「事業的規模」の不動産所得になりますと、青色申告特別控除が最高の65万円控除を受けることができます。「事業的規模」でなければ、青色申告者であっても10万円控除となります。
また青色事業専従者給与とは、簡単に言ってしまえば、従業員の給与のことです。青色申告であればこの給与を全額必要経費にできますが、白色申告は給与の額に関係なく、最高86万円までとなっています。
65万円控除のために無理して不動産投資の規模を拡大する必要はありませんが、税制上の特典を受けるために青色申告をしておくことをおすすめします。
不動産所得の損失は給与所得と合わせることができる
10ある所得のうち、不動産所得や事業所得で損失がでた場合は、他の所得と合わせることができます。これを損益通算といいます。
不動産投資を行う初年度は特に赤字になりやすいですし、長期間に渡って投資するでしょうから、損益通算について知っておくと役立ちます。ここでは不動産投資で200万円の赤字だったケースを考えてみます。
<Aさんの年収>
- 給与収入(年収) 500万円
- 給与所得 346万円
- 所得控除額 70万円
- 所得税 37万円
- 不動産所得 ▲200万円
※給与収入500万円-154万円(給与所得控除)=346万円(給与所得)
346万円-70万円=276万円(課税給与所得)
課税給与所得に税率をかける。
給与収入は、給与所得控除額や所得控除(社会保険料控除や配偶者控除)などを控除し、税率をかけます。控除額によって税金が異なりますし、所得税と住民税とでは控除の額で違いがあります。
所得税だけ考えてAさんの税負担がどのくらい変わるか見てみましょう。
<不動産所得の損失と給与所得>
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給与のみ |
給与と不動産 |
給与収入 |
500万円 |
500万円 |
不動産収入 |
- |
▲200万円 |
総所得 |
276万円 |
76万円 |
所得税 |
178,500円 |
38,000円 |
不動産所得の損失は、給与所得と合算できますので、総所得は76万円になり、この場合の所得税は38,000円です。Aさんは、差額の140,500円が確定申告することで還付されます。
なお住民税にも節税効果があります。この節税効果が不動産投資のメリット(<「不動産投資のメリット・デメリット」>)の一つです。
ちなみに、節税効果が目的になってしまうと、本末転倒です。あくまで不動産投資で収益を得ることが目的であることは忘れてはいけません。
不動産を売却すると譲渡所得に該当する
不動産価格が上昇すれば売却して利益を得ることもできます。家賃収入がインカムゲインとすれば、不動産の売却で得られる利益はキャピタルゲインです。不動産の売却は譲渡所得に該当しますので、不動産所得とはルールが異なります。
まず土地建物の譲渡で損失が出たとしても、不動産所得のように給与所得と損益通算することはできません。土地建物は株式と同じく、他の所得と区別して申告する分離課税を採用しています。また、土地建物の譲渡所得には短期譲渡所得と長期譲渡所得があります。
- 短期譲渡所得:「取得日から売却した年の1月1日まで」で5年以下
- 長期譲渡所得:「取得日から売却した年の1月1日まで」で5年超
短期か長期かは、5年で判断しますが、売却時には注意が必要です。売却した年の1月1日までですので、例えば、2012年5月1日に取得、2017年6月1日に売却した場合、暦の上では5年を超えていますが、所有期間上は5年以下となります。この場合の売却日は2017年1月1日です。
⇒「5年超」とするためには、2018年1月1日以降に売却する。
短期と長期、どちらに該当するか、非常に大切です。下記の表を見ていただくとわかりますが、税率がおよそ倍違うため、不動産を売却する場合は、基本的に5年経過してからとなります。
<短期譲渡所得と長期譲渡所得>
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所得税率 |
住民税率 |
合計 |
長期譲渡所得 |
15.315% |
5% |
20.315% |
短期譲渡所得 |
30.63% |
9% |
39.630% |
税制を把握することで受取額を増やす
不動産投資に関係する所得として、不動産所得と譲渡所得を紹介いたしました。収支計画を立てるときには税金を考慮しておくとより正確な受取額を把握することができます。一般的な内容であればお近くの税務署に問い合わせれば教えてくれますので、税制にも強くなりましょう。
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