しっかりチェック!確定申告と源泉徴収票の見方
確定申告を行うことで「副業収入分」の税金が増えるだけではおもしろくありません。
これまで会社任せだった所得税の計算ですが、「源泉徴収票」から家計の状態を読み、収入を増やしながら節税も実現する経営者意識を高めていくことが重要です。
目次
副業収入があるサラリーマンの確定申告と源泉徴収票
節税対策は経営の基本
サラリーマンでありながら副業収入を得ていこうとすると、確定申告や源泉徴収票に関連する知識は基本として持っておく必要があります。
競馬配当金に伴う裁判で「当たり馬券の購入費のみ経費として計上できる」という判例もありましたが、経理や税法の関連知識には日頃から関心を持ち、効果的な節税対策に力を入れることは経営の基本です。
そのためにも、自分の副業に関連して①所得の区分 ②経理と税務の知識 ③確定申告の仕方 の3点は胸に刻んでおきたいものです。
もっと儲けるために必要な知識を吸収
副業収入といっても、アルバイトばかりではありません。ネット販売などの事業所得やFXのような雑所得など、自分が得意とする分野で所得を拡大する可能性が大きく広がっています。
経費として計上できる支出項目や電気代など家事消費との支出割合を算出する根拠も学び、白色申告から青色申告にすることで基礎控除額を大きくするなど確定申告に関する知識を吸収する必要があります。
小さな金額でもきちんと管理
副業で生まれる収入の確定申告には、勤務先から受け取る源泉徴収票が必要です。確定申告書は、給与や賞与として支給された額や源泉徴収税額を記入しながら再計算を行うからです。
また、短期間のアルバイト収入であっても源泉徴収されることもあり、必ず源泉徴収票を受け取るようにしましょう。小さな金額をきちんと管理することこそ、節税対策の第一歩です。
経営者意識を高め節税につながる経営管理
Business Photo Shoot / Randy Kashka
副業による所得が20万円を超えれば確定申告が必要
確定申告の受付期間は、原則2月16日から3月15日の1か月間です。
一般的なサラリーマンが副業で収入を得て確定申告を行うとすれば、次の5つが考えられます。
①給与所得(アルバイトなど)
②事業所得(ネット販売など)
③不動産所得(不動産賃貸料など)
④配当所得や雑所得(株やFXなど)
⑤一時所得(生命保険の一時金や公営ギャンブルの払戻金など)
収入から経費を差し引いた「所得」が20万円以下なら税務署への確定申告はしなくても良いのですが、市町村への県・市民税の申告は20万円以下でも行う必要があります。
源泉徴収票に記載された金額に副業収入を加えて、源泉徴収税額を再計算するのが確定申告です。
マイナンバー記載の確定申告は平成29年から
源泉徴収票は平成28年1月以降の支払いから適用されるので、平成28年の最初の給料日前日までにマイナンバーを記載した「平成28年分の給与所得者の扶養控除等申告書」を提出する必要があります。
マイナンバー法は平成28年分の副業収入から適用されるため、マイナンバーを記載する確定申告は平成29年2月からとなります。
サラリーマンの確定申告と源泉徴収票~3つの注意点
Where the ideas form / Vegar S Hansen Photography
源泉徴収票の発行義務を持つ給与支払者
給与支払者は、アルバイト社員を含め全社員に対して「源泉徴収票」の発行義務があります。
しかし、年の途中で退社した社員には発行しないケースも多いので、確定申告に必要な源泉徴収票は年末もしくは確定申告前にあらためて発行請求する必要が出てきます。
アルバイトも毎月の支給額によっては源泉徴収をしています。ネットなどでも仕事(=事業所得)をしていると通信費などの一部は経費として計上できるので、税金の還付が受けられる可能性も出てきます。
副業収入が1円でも市町村への確定申告は必要
副業収入があるサラリーマンの確定申告は、税務署と住民登録のある市町村に行う場合と2つあります。
小規模な副業収入や年金収入などは市町村でも確定申告を受け付けていますが、税務署で行う「確定申告」と市町村で行う「市県民税の申告」は違うということを知っておく必要があります。
サラリーマンの副業収入は、「所得」が20万円以下なら税務署への申告は不要です。しかし、住民税は1円でも所得があると課税対象となるので市町村での「市県民税の申告」が必要です。
確定申告で還付を受けるにはすべての勤務先源泉徴収票が必要
副業収入が複数のアルバイト先や、年の途中で退職し他の職場に移った場合、確定申告で所得税の還付を受けるためにはすべての会社の源泉徴収票を添付する必要があります。
源泉徴収票の見方と源泉徴収税額の計算方法
年末調整と源泉徴収票
毎月所得税が源泉徴収されているサラリーマンは確定申告をする必要がなく、勤務先が1年間の源泉徴収税額を計算します。これが年末調整で、その結果を表したのが源泉徴収票です。
毎年、11月頃には経理部署から「扶養控除等申告書」と「保険料控除申告書」の提出を求められます。
年末調整は、勤務先から受け取る「給与や賞与(=年収)」から基本的な控除を行い、さらに個人ごとに異なる家族構成や生命保険料納付金額を控除して算出されます。
12月の楽しみ?年末調整による所得税還付
サラリーマンは、毎年12月分の給与明細書と一緒に「源泉徴収票」を会社から受け取ります。年末調整の結果、所得税還付で手取り額が前月より増えていることもあり、ささやかな楽しみにもなっています。
所得税は毎月源泉徴収されているので、例えば、年の途中で子どもが生まれ扶養家族が増えると年末調整で控除額が大きくなって、生まれる前の源泉徴収分との差額が生じるのが理由です。逆に扶養から外れた場合は、還付ではなく追加徴収されることもあります。
扶養家族欄と生命保険料控除欄は必ずチェック
「源泉徴収票」を受け取ったら、控除項目がきちんと反映されているかを確認しておきましょう。
「支払金額と源泉徴収税額」の金額確認はすぐできませんが、「配偶者欄」のチェックが入っているか、「保険料控除欄」に金額が記入されているかはすぐにわかります。
扶養家族である妻や子どもの数によって控除額が違います。最近はほとんどコンピュータ会計なので計算の間違いは少ないでしょうが、チェック項目に単純な入力ミスがあれば所得税額が違ってきます。
源泉徴収票のチェックと源泉徴収税額の計算方法
playing Economicon @ playlablondon.com / wetwebwork
「収入」と「所得」と「控除内容」が記載された源泉徴収票
左から「給与・賞与」という記入に続いて、
①支払金額
②給与所得控除後の金額
③所得控除の額の合計額
④源泉徴収税額
4つの数字が横に一行分並んでいます。
給与支払者(経理部署などが計算)は「①支払金額(年収)」から「②給与所得後の金額」を決め、「所得控除の額の合計額(社会保険、扶養控除や生命保険料控除など)」を引いた金額から、「④源泉徴収税額」を算出しています。
年収500万円のサラリーマンの例
「支払金額500万円」のサラリーマンを例に見てみます。
①支払金額
支払金額500万円は毎月の給与と賞与の合計額、いわゆる年収です。1か月に10万円以内の通勤費は非課税なので支払金額には含まれていません。
②給与所得控除後の金額
支払金額500万円(360万超~660万以下)の所得控除金額計算式は「500万円×20%+54万円」(平成27年分まで)なので、控除金額は154万円となります。(注意:年収600万円以下の場合は別表を使うので少し違います。年収区分により計算式は異なります)
引用:国税庁ホームページ
500万円から控除金額154万円を引いた「346万円」が、給与所得控除後の金額となります。
③所得控除の額の合計額
扶養家族控除や社会保険料、生命保険料控除額の合計です。
家族に関連する控除には、独身でも適用される基礎控除分として38万円、配偶者控除38万円、子どもなど配偶者以外の扶養親族(1人として)1×38万円があり合計114万円。
加えて健康保険料や厚生年金保険料など社会保険料が約70万円、生命保険料控除が5万円だとすると、合計189万円です。
一般生命保険料控除は旧制度(2011年12月31日までに契約)と新制度(2012年1月1日以降契約)によって控除額は異なりますが、年間支払額が10万円であっても上限5万円(旧制度)です。
介護医療保険料控除額と個人年金保険料控除額を合わせた上限は12万円となっています。
④源泉徴収税額の算出
「②給与所得控除後の金額=346万円」から「③所得控除の額の合計額=189万円」を引くと157万円。金額「157万円」に対して、速算表を使って所得税額(1000円未満切り捨て)を算出(195万円以下税率5% で控除額0円)します。源泉徴収税額は7万8,500円となります。
引用:国税庁ホームページ
まとめ 源泉徴収票と確定申告からわが家の経済状態が見える
Cydcor Conference attendees / Cydcor
健全な家計運営と成長する副業のための数値管理
源泉徴収票の「支払金額(=年収)」から「社会保険料等の金額」と「源泉徴収税額」を引けば、およその手取り金額がわかります。
本文で紹介したように、年収500万円だと社会保険料が70万円、源泉徴収税額は7万8,500円だったので手取り金額はおよそ420万円、月額にして35万円です。
この中から家賃や生命保険料を払い、食費や教育費、その他の支出に充てているはずです。日々、家計簿を付けていれば分かりますが、源泉徴収票からも家計の状態を数字として読み取ることができます。
数字を読むことは、データを客観的に見ることにつながり、副業による収入を伸ばすにあたって基本的な経営者のスキルが磨かれます。
数値管理で利益の増大と正確な確定申告を実現
ネット販売や雑所得として扱われるFXだと、インターネットを使います。すると毎月データ通信料などの経費が発生。パソコンも処理スピードが速い最新機種を導入する必要が出てきます。
仕入のための資金や経費も必要になるでしょう。それらを含めて原価計算したり、資金繰りも行います。売上が増えれば増えるほど、経費も増えていくものです。
勤務先が算出する源泉徴収票に加え、副業によって生まれる収入や支出を数字として管理し、確定申告によって自分で整理することで、収入に対してどれだけの利益が生まれるのかきちんと把握することができます。これが、健全な家計運営や経営を続ける基本です。
数字全体を大ざっぱに見ることも必要ですが、経理の視点で見るときは細かく分析・評価する必要があります。
副業が単なる一時期の収入確保に終わることなく、安定的に利益を生み増やすことができるようにするためにも、源泉徴収票を含む帳簿管理から正確な確定申告につなげる努力が求められます。
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